読み込み中...
読み込み中...
A 社は,中堅の国際物流会社で,中国・アジアを中心に複数拠点があり,国内での荷物の引取り,輸出手続,輸出こん包,国際輸送から,海外での輸入手続前の貨物を保管する保税倉庫の管理,輸入手続,現地配送までをワンストップでサービス提供する国際配送体制を整えて,物流サービスの提供料による売上げを伸ばしてきた。近年,国際的な物流ネットワークの発展とスマートフォンの普及によるインターネットユーザが増加している。インターネットの通信販売サイトを通じて,海外の消費者に日本国内の商品を販売する国際的な電子商取引(以下,越境 EC という)の市場が拡大しており,A 社も,物流サービスだけでなく,越境 EC 分野のサービスを提供している。そこで,A 社は,デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進によってビジネスモデルを変革することで,A 社の事業全体を成長させるための IT 戦略を立案した。
(1) 市場の変化への対応について
市場において EC モールなどのチャネルや決済方法が次々と新しくなっており,こうした変化に対応するために,顧客から頻繁に個別のカスタマイズ要望がある。越境 EC サービスでは,小さなカスタマイズ要望でも,システム全体に影響することが多く,開発規模が大きくなる傾向にある。A 社は,できるだけ多くのカスタマイズ要望に迅速に応えたいが,開発期間やコストを要するので限界がある。
(2) 幅広い消費者層の取り込みについて
A 社の顧客は,海外の SNS を活用したマーケティング活動によって幅広い消費者層を取り込んで,注文を獲得したいと考えている。A 社は,消費者の注文の受付から現地への発送までは提供できているが,マーケティング活動の支援はできていない。
(3) 商品の配送について
A 社の顧客の多くは,現地で在庫をもつ仕組みがないので,商品を配送する場合,日本から海外へ直送するしかない。直送のリードタイムは,国によっては 2 週間以上掛かることが多く,消費者は送料も負担する必要があるので,A 社の顧客は,消費者の満足を得られていないと考えている。A 社は,現地の輸入手続前に関税を留保したまま保管が可能な保税倉庫を利用して,顧客の在庫を預かるサービスを提供している。A 社の顧客にこのサービスを利用してもらうことができれば,保税倉庫へ商品をロットで輸送して保管しておき,そこから消費者への配送を手配できるので,リードタイムを短縮でき,送料負担も軽減できる。しかし,A 社の顧客は,売れ残りによる保管料の負担や返送又は廃棄の費用の負担を懸念しているので,保税倉庫の利用に前向きではない。
① 越境 EC システムの再構築
A 社は,小さなカスタマイズ要望が大きな開発につながらないようにするために,越境 EC システムを再構築する。再構築する越境 EC システムでは,アプリケーションソフトウェアを機能ごとに分割して,独立したそれぞれの機能を一つのマイクロサービスとして管理する。そして,各マイクロサービスを組み合わせて,相互に疎結合で連携して機能するシステム構成にする。A 社は,越境 EC システムをマイクロサービス化することによって,顧客に必要な機能を選んで利用してもらい,カスタマイズ要望による追加機能や機能の改変が頻繁に発生しても,マイクロサービス単位で改修を行うことで,システム全体への影響を抑えながら,迅速に対応できると考えた。さらに,各機能を疎結合で連携させることによって,API エコノミーを活用するなど,A 社からも顧客の売上増に結び付くビジネスモデルを提案しやすくなると考えた。
② マーケティング活動の支援
A 社は,顧客のマーケティング活動を支援するために,API エコノミーの活用を具体的に進めた。消費者が使い慣れた SNS などのアカウントを使った認証サービスによって,顧客の越境 EC サイトへの会員登録を省力化できるソーシャルサインインを導入する。A 社は,消費者が SNS のショッピングタグから越境 EC サイトに入りやすくなれば,A 社の顧客が消費者からの注文を獲得しやすくなると考えた。A 社は,顧客のマーケティング活動の効果を適切に把握するために,ソーシャルサインインに加え,SNS 上のライブコマースとデジタル広告を活用したテストマーケティングを行った。テストマーケティングでは,SNS を経由して会員登録した会員からの注文を,予想以上に獲得することができた。これによって,ソーシャルサインインは,マーケティング活動を支援するサービスとして成立することが検証できた。
③ 保税倉庫の活用を可能にするサービスの提供
A 社は,消費者の満足度の向上のために,保税倉庫を活用した配送は不可欠だと考えた。保税倉庫に在庫を確保した場合,販売見込みが大きく外れたとしても,長期滞留や別の倉庫への在庫移動は国内の倉庫のように手続上容易ではない。そのため,保税倉庫を活用するには,需要予測に基づいた適切な在庫管理が必要になるが,A 社の顧客は,需要予測を行うシステムやノウハウをもたない企業がほとんどである。そこで,越境 EC サービスで,A 社の顧客の販売商品の特性に応じて,適切な在庫管理が行える需要予測サービスを新たに提供することを考えた。A 社は,EC サイトや EC モールでの売上実績や消費者の商品の検索履歴に加えて,イベントの実施や SNS への発信,広告配信といったマーケティング活動のデータなどを収集して,需要を予測するためのデータとして蓄積する。A 社は,AI を活用して大量のデータから相関関係を分析する需要予測サービスによって,A 社の顧客が,売れ筋商品の在庫を補充するロットとタイミングを判断したり,イベントを実施する際に必要な在庫量を事前に確保したりすることができると考えた。
A 社は,こうした DX の推進によって,ビジネスモデルの変革を実現した。
〔A 社のサービスの課題〕について,A 社は課題を解決することによって,どのように事業を成長させようと考えたか,35 字以内で述べよ。
〔A 社の DX 推進〕の①越境 EC システムの再構築について,(1),(2)に答えよ。
小さなカスタマイズ要望が大きな開発につながる現状の越境 EC システムの仕組み上の原因について,35 字以内で述べよ。
越境 EC システムの再構築によって,A 社サービスのどのような課題を解決できるか,30 字以内で述べよ。
〔A 社の DX 推進〕の②マーケティング活動の支援について,A 社が API エコノミーの活用を具体的に進めることによって,A 社の顧客が得られるメリットは何か,25 字以内で述べよ。
〔A 社の DX 推進〕の③保税倉庫の活用を可能にするサービスの提供について,(1),(2)に答えよ。
消費者の満足度の向上のために,保税倉庫を活用した配送が不可欠だと A 社が考えた理由について,30 字以内で述べよ。
需要予測の情報を用いて,A 社の顧客はどのように在庫管理を行うことができると考えたか,具体的に二つ挙げ,それぞれ 30 字以内で述べよ。