ITストラテジスト 科目B-2(論述式)攻略ガイド|合格論文の書き方と準備法
科目B-2(論述式)とは
科目B-2は、ITストラテジスト試験の最終科目で、自身の実務経験に基づいて論文を書く論述式試験です。他の高度試験の多くが「記述式」であるのに対し、ITストラテジストでは120分で2,000字以上の論文を書き上げる必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験時間 | 120分(14:30〜16:30) |
| 出題数・解答数 | 出題2問・解答1問(自分で選択) |
| 形式 | 論述式(設問ア・イ・ウの3設問構成) |
各問題は以下の3つの設問で構成されています。
| 設問 | 文字数 | 内容 |
|---|---|---|
| 設問ア | 800字以内 | 背景と状況設定(事業概要、課題、自分の役割) |
| 設問イ | 800字以上1,600字以内 | 本論(具体的な施策、工夫、判断のプロセス) |
| 設問ウ | 600字以上1,200字以内 | 評価と改善(成果、経営層からの指摘と改善策) |
科目B-2が合否を分ける
ITストラテジスト試験の合格率は約15%ですが、科目ごとの通過率を見ると、科目B-2(論述式・旧午後II)が最大のボトルネックであることが一目でわかります。
| 科目 | 通過率(令和7年度春期) |
|---|---|
| 科目A-2(旧午前II) | 87.8% |
| 科目B-1(旧午後I) | 62.0% |
| 科目B-2(旧午後II) | 33.9% |
科目B-2にたどり着いた2,466人のうち、合格できたのは836人。約3人に2人がこの最終関門で脱落しています。知識の暗記や読解力だけでは突破できず、「120分で2,000字以上の論文を書き上げる」という総合的なスキルが求められるのが難しさの本質です。
令和7年度春期 評価ランク分布
| ランク | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| A(合格) | 836 | 33.9% |
| B | 953 | 38.6% |
| C | 473 | 19.2% |
| D | 204 | 8.3% |
| 合計 | 2,466 | - |
注目すべきは、ランクBが953名(38.6%)と最も多い点です。「論文としてはまとまっているが、具体性が足りない」受験者が最大のボリュームゾーンです。本記事では、このBとAの差を埋めるための攻略法を解説します。
評価基準と不合格パターン
ランクA/B/C/Dとは
科目B-2は点数ではなくランク(A/B/C/D)で評価され、Aランクのみが合格です。
- ランクA(合格) : 設問の趣旨に沿い、具体的な内容で論旨が一貫しており、ITストラテジストとしての見識が認められる
- ランクB: おおむね良いが、具体性や論理展開の深掘りが足りない。「あと一歩」のレベル
- ランクC: 抽象的すぎる、問題文の要求に対応していない、論理展開が不明瞭
- ランクD: 文字数不足、問題文を無視、内容が著しく不十分
合格論文に求められる要素
IPA公表の採点講評や合格者の分析を総合すると、以下の要素が評価に影響します。
| 評価観点 | 内容 | ランクAの目安 |
|---|---|---|
| 設問要求への対応 | 設問が求める事項にすべて答えているか | 要求事項を漏れなく記述 |
| 具体性 | 具体的な技術・手法・数値が含まれるか | 固有名詞、数値、技術名が豊富 |
| 論理の一貫性 | 設問ア→イ→ウが一本のストーリーか | 矛盾なく因果関係が明確 |
| ITストラテジストの視点 | 経営とITを結ぶ戦略家の視点で書かれているか | 経営課題→IT戦略の論理展開 |
| 洞察力・見識 | 表面的でなく深い分析があるか | 「なぜそうしたか」の判断根拠が明確 |
ランク別の不合格原因
ランクD(字数不足・的外れ):
- 設問イが800字に満たない(最低字数未達は即ランクD)
- 問題文の要求と全く異なる内容を書いている
- 設問ウを書き切れずに時間切れ
ランクC(具体性不足・論理の破綻):
- 「IT戦略を策定した」とだけ書き、具体的に何をしたか不明
- 設問アの背景と設問イの施策がつながっていない
- 設問の要求事項を見落として一部しか答えていない
ランクB(あと一歩):
- 全体的に良い論文だが、具体的な数値・技術名・判断根拠が不足
- 「経営層に説明した」と書くだけで、何をどう説明したか不明
- 設問ウで「改善したこと」が求められているのに、成功談だけ書いている
- 設問イの「工夫」が浅い
メモ: ランクBとAの差は「具体性」 です。「なぜそうしたのか」「具体的にどうしたのか」を徹底的に書くことが、BからAへの壁を越える鍵です。
ネタ(題材)の準備
なぜネタ準備が不可欠か
多くの合格者が口をそろえて言うのは「受験する時には、既に合否は決まっている」ということです。120分の試験時間内に一から内容を考えて2,000字以上を書くのは不可能です。事前にネタを準備し、問題に合わせてアレンジする戦略が合格への大前提です。
ネタの作り方(5ステップ)
ステップ1: 職務経歴の棚卸し
関わったIT案件を時系列でリストアップします。規模の大小を問わず、IT戦略・経営改善に関わるエピソードをすべて洗い出しましょう。
ステップ2: ITストラテジスト視点での再解釈
自分はプログラマやPMの立場だった場合でも、「もし自分がITストラテジストだったら、この案件をどう企画・推進しただろうか」と視点を上げて再解釈します。
ステップ3: 汎用ネタの作成
1つの案件から複数テーマに使える汎用的なネタを作ります。例えば「基幹システムの刷新」案件は、「DX推進」「IT投資評価」「業務改革」などの切り口で応用できます。
ステップ4: 設問ア用の「設定」を固定
事業概要・事業特性・自分の役割を400字程度のテンプレートにまとめます。この部分は問題によらず使い回せるので、事前に完成度を高めておきましょう。
ステップ5: 設問イ用の「施策集」準備
テーマ別に具体的な施策・工夫・数値をメモにまとめます。テーマごとに「何をしたか」「なぜそうしたか」「どんな効果があったか」の3点を整理しておくと、設問に合わせて素早く構成できます。
メモ: ネタは2-3パターンあれば十分です。1つの案件を複数の切り口で語れるよう準備しましょう。
頻出テーマ一覧
過去問を分析すると、以下のテーマが繰り返し出題されています。近年はDX関連テーマが急増しており、令和元年以降ほぼ毎年出題されています。ネタ準備の際に参考にしてください。
| テーマ | 出題年度(例) | 概要 |
|---|---|---|
| DX推進・新サービス企画 | R7, R6, R3, R1 | DXの企画策定、新サービスの企画 |
| IT戦略・基幹システム刷新 | R7, H30 | 事業目標に基づくIT戦略策定、刷新方針 |
| ビジネスモデル策定 | R6, R1 | ITを活用した新ビジネスモデル |
| 基幹システム再構築 | R7, R4 | 基幹システムの刷新、開発優先順位 |
| 顧客満足度向上 | R4 | IT活用による顧客体験向上 |
| システムリスク対応 | R5 | システムリスク対応方針の立案 |
| 改修要望の分析 | R5 | ITシステムの改修要望の分析・対応方針 |
| デジタル技術の業務活用 | R1 | AI・IoT等による業務プロセス改善 |
| 情報化投資・投資効果 | H29 | IT投資効果の検討、KPI設定 |
メモ: 問3は「組込みシステム・IoT製品」テーマが多く、それ以外の受験者は実質的に問1・問2から選択します。自分のネタに合う問題を選べるよう、幅広いテーマに対応できる準備をしましょう。
実務経験が浅い・ない場合の対策
業務未経験でも合格している人は複数います。ポイントは以下の通りです。
- 自部門の案件をITストラテジスト視点で拡張解釈する: 開発者やSEとして関わった案件も、企画・戦略の視点で捉え直せる
- 公開事例を活用する: 経済産業省のDX推進ガイドラインや、企業のDX事例集をベースに、自分の経験と組み合わせる
- 特色ある設定を作る: ありきたりな話よりも、特定の業種・地域特性・業界課題を含めた具体的な設定の方が説得力が増し、論述もしやすくなる
- 合格論文の「思考パターン」を学ぶ: 参考書の合格論文を音読し、解答のノリ(論理の流れ、表現の仕方)を身体で覚えるのが効果的
設問ア・イ・ウの書き方
設問ア(800字以内):背景と状況設定
設問アは論文の舞台を設定するパートです。採点者がまず読む部分であり、ここで「この受験者は具体的な経験に基づいて書いている」と印象づけることが重要です。
含めるべき4つの要素:
- 事業概要と事業特性(業種、規模、市場環境の特徴)
- 課題・背景(なぜ取り組みが必要だったか)
- あなたの立場・役割(ITストラテジストとしてどう関わったか)
- 対象システム/プロジェクトの概要
具体性を出すコツ:
「ある製造業」ではなく「従業員3,000名の自動車部品製造業」、「売上を伸ばす」ではなく「3年以内に売上高を120億円から150億円へ25%増加させる」のように、数値と固有の条件を入れましょう。
よくある失敗:
- 一般的な業界説明に字数を使いすぎ、自分の具体的な状況が伝わらない
- 設問イにつながる伏線がなく、唐突な展開になる
- 字数が少なすぎる(400字未満)
目安の字数: 600-800字。事前に2-3パターンの「事業概要+自分の役割」を準備しておくと、本番で迷わず書き始められます。
設問イ(800字以上1,600字以内):本論(最重要)
設問イは論文の核心であり、配点も最も高いパートです。ここであなたのITストラテジストとしての実力が判定されます。
近年の設問パターン:
過去問を分析すると、設問イではほぼ毎年「工夫したこと」「特に重要と考えたこと」が問われます。
- 「あなたが特に重要と考えて工夫したこととともに」(令和7年度 問1)
- 「あなたが特に重要と考え、工夫したことを明確にして」(令和7年度 問2)
- 「工夫したこととともに」(令和6年度 問1)
「工夫」の書き方のポイント:
単に「〜を実施した」と書くだけでは不十分です。なぜその方法を選んだのか、他にどんな選択肢があったのか、どう判断したのかまで踏み込むことで「工夫」が伝わります。
合格者の多くは以下の構成を推奨しています:
- 施策の全体像と方針(何をするか)
- 具体的な取り組みと工夫(どう工夫したか、なぜそうしたか)
- 期待される効果(どんな成果を見込んだか)
具体性の出し方:
- 技術名を明記する(AI、IoT、クラウド、RPA、ERPなど)
- 数値を入れる(投資額、ROI、期間、対象人数、処理件数など)
- 投資効果はBSC(バランスト・スコアカード)の4つの視点(財務、顧客、業務プロセス、学習と成長)で整理すると説得力が増す
- 複数案の比較検討を示し、選定理由を述べると高評価
よくある失敗:
- 教科書的な一般論を書いてしまい、「あなたの経験」が見えない
- 施策を羅列するだけで、「なぜそれを選んだか」の判断根拠がない
- 設問アの背景との論理的なつながりが弱い
目安の字数: 1,200-1,500字(上限に近いほど内容が充実している印象を与える)
設問ウ(600字以上1,200字以内):評価と振り返り
設問ウは経営層や事業部門への説明・提案と、そのフィードバックを受けた改善を書くパートです。近年の出題では、ほぼすべての問題でこのパターンが使われています。
近年の設問ウの典型パターン:
- 「経営層にどのような説明をしたか、経営層の評価を受けて改善したこととともに」(令和7年度 問1)
- 「対応策に取り入れた経営層や事業部門の意思を明確にして」(令和7年度 問2)
- 「経営層からの指摘、指摘を受けて改善したこととともに」(令和6年度 問1)
書き方の構成:
- 誰に、何を説明/提案したか(経営層や事業部門に、投資効果や実施計画を説明)
- どんな評価・指摘を受けたか(コスト面の懸念、スケジュールの見直し要求など)
- 指摘を受けてどう改善したか(段階的導入への変更、KPIの追加設定など)
「改善」を忘れない:
設問ウで最も多い失敗は、成功談だけ書いて「改善」の記述がないことです。「経営層から高い評価を得た」で終わると、問題文が求める「改善したこと」に答えていないと判定されます。必ず「指摘→改善」のセットで記述しましょう。
ある合格者は「経営層からの指摘はITストラテジスト単独では解決しづらい内容にすると論述しやすい」と助言しています。例えば「協業先の選定基準の見直し」や「全社的なデータガバナンス体制の構築」など、組織横断的な課題を指摘として設定すると、改善策の記述に広がりが出ます。
目安の字数: 800-1,100字
書き方の共通テクニック
問題文の「オウム返し」を活用する:
問題文が「経営上の有効性」と述べていたら、設問イでも「経営上の有効性として〜」と明示的に応答します。これにより、設問の要求事項に漏れなく答えていることが採点者に伝わります。
接続詞で論理の骨格を見せる:
「そこで」「一方」「その結果」「しかし」「したがって」を意識的に使い、論理展開を明示しましょう。採点者は大量の論文を読みます。論理構造が一目でわかる文章は高評価につながります。
「ITストラテジスト」の視点を貫く:
問題文は常に「ITストラテジストは〜」と書いています。プログラマやPMの視点ではなく、経営とITを結ぶ「戦略家」の視点で書きましょう。
- NG: 「システムを開発して導入した」
- OK: 「経営課題の解決に向けて、投資対効果をROIで示し、事業部門との合意のもと段階的な導入を企画した」
時間配分と試験当日の戦略
120分の時間配分
| 時間帯 | 所要時間 | やること |
|---|---|---|
| 0:00-0:10 | 10分 | 問題文を2問とも読み、どちらを書くか決定。選んだ問題の設問ア・イ・ウの要求事項を確認し、骨子(各設問3-5行のメモ)を作成 |
| 0:10-0:30 | 20分 | 設問アを執筆。事前準備の「設定」を土台に、問題文に合わせてアレンジ |
| 0:30-1:20 | 50分 | 設問イを執筆。最も時間をかけるべき核心部分 |
| 1:20-1:50 | 30分 | 設問ウを執筆。経営層への説明と改善を記述 |
| 1:50-2:00 | 10分 | 全体の見直し。字数確認、誤字脱字、論理の矛盾チェック |
最初の10分は絶対に削らない。ここで骨子を固めずに書き始めると、途中で方向転換が必要になり致命的な時間ロスが発生します。「考える時間」と「書く時間」を明確に分けることが、120分を有効に使う最大のコツです。
設問イに全体の40%以上の時間を確保しましょう。最も配点が高いパートに最も時間をかけるのが鉄則です。
当日の心構え
- 問題選択は最初の5分で確定: 2問とも読み、自分のネタに近い方を選ぶ。迷ったら「設問ウの要求が書きやすい方」が安全
- 骨子段階で行き詰まったら即切り替え: もう一方の問題に変える勇気も大切。早い段階なら十分間に合う
- 手書きの場合: 書き直しは最小限に。骨子段階で方向性を固める。矢印を使って余白に追記しても採点に支障はないとされている
- 最後まで粘る: 途中退室せず、最後の10分で見直しを行う。字数の過不足、誤字脱字、設問の要求事項の漏れを最終確認
メモ: 2026年度からCBT方式への移行が予定されています。キーボード入力に変わる場合、手書きより修正は楽になりますが、タイピング速度の事前確認は必須です。
効果的な練習法
ステップ1: 合格論文を読む・音読する
まず書くのではなく、合格論文の「読み込み」から始めるのが効果的です。参考書の合格論文例を音読し、論文の「ノリ」——論理展開のリズム、表現の仕方、具体性のレベル感——を身体で覚えましょう。複数の合格者が「音読で合格論文のパターンをつかんだ」と報告しています。
ステップ2: 骨子作成の練習(1問あたり15分)
過去問の問題文を読んで、15分以内に骨子(各設問3-5行のメモ)を書く練習を繰り返します。この段階では本文は書きません。骨子作成を素早くできるようになることが、本番の時間配分を安定させる鍵です。1週間に2回程度のペースで継続すると、問題を見た瞬間にネタと構成が浮かぶようになります。
ステップ3: 時間を計って通し練習
120分を計って、骨子作成から完成まで通しで書きます。手書きの場合は原稿用紙に実際に書く練習が必須です。最低3回は通し練習を行いましょう。時間内に書き切る感覚をつかむことが目的です。
ステップ4: フィードバックを活用する
自分の論文を客観的に評価してもらうことが上達の近道です。シカクテックの論述演習では、AIがランク判定と設問ごとの改善点を提示するので、何が足りないかを具体的に把握できます。
自己採点する場合は、以下の3軸でチェックしましょう:
- 具体性: 固有名詞・数値・技術名が入っているか
- 論理性: 設問ア→イ→ウの因果関係が通っているか
- 問題文への適合性: 設問の要求事項にすべて答えているか
メモ: 練習は「量」より「質」が重要です。1本書いたらしっかり振り返り、改善してからもう1本。3-5本の通し練習で大きく実力が上がります。
まとめ
科目B-2(論述式)は「準備で勝負が決まる試験」です。通過率33.9%は高い壁ですが、適切な準備をすれば十分に突破できます。
合格への3つの鍵:
- ネタ準備: 2-3パターンの汎用ネタを事前に作り込む
- 構成力: 設問ア・イ・ウの「型」を身につけ、安定して書けるようにする
- 時間管理: 120分の配分を体に覚えさせ、書き切る力を養う
シカクテックでは、ITストラテジスト試験の論述問題をオンラインで演習できます。AI添削でランク判定と具体的な改善点がわかるので、効率的に合格力を伸ばせます。
- 科目A-2(四択問題)の過去問演習 — まず足切りを確実に突破
- ITストラテジスト試験の概要 — 試験全体の情報
この記事を書いた人
シカクネコ
情報処理技術者試験を中心に、IT・ビジネス系資格の学習法や試験対策についてわかりやすく発信しています。実際の受験経験をもとに、効率的な勉強法をお届けします。
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