B 社は,精密機械の製造・販売を行っている。精密機械の生産は,関東工場及び九州工場で,毎週日曜日 22:00 から作業を開始し,その週の金曜日 22:00 まで連続で行われている。B 社生産部では,工場の生産活動に関わる計画及び管理を行っている。
〔B 社のシステム概要〕
B 社情報システム部では,生産部の生産活動を支援する生産システム,社員からのメール送受信機能を担うメールシステム及び IT 機器の構成情報を管理する構成管理システムを運用している。関東工場及び九州工場の PC は,それぞれの工場に勤務する生産部及び情報システム部の部員が使用する。B 社のシステム構成を図 1 に,B 社のシステム概要を表 1 に示す。
保守 LAN に接続されている生産サーバ(副)及び DB サーバ(副)(以下,これらを副サーバ群という)は,土曜日の日中を除いて LAN 切替スイッチによって業務 LAN から切り離されており,生産システムのプログラムの開発とテストに使用される。テストが完了したプログラムは,土曜日の日中に生産サーバ(正)に展開される。
障害が発生し,生産システムが長時間使用できない場合は,保守 LAN を業務 LAN に接続し,副サーバ群を稼働環境として使用することができる。
メールシステム
社内及び社外との電子メール送受信が,メールサーバで処理される。
構成管理システム
構成管理システムでは,B 社で使用するサーバ及び PC の構成情報を構成管理サーバに登録している。全てのサーバ及び全ての PC には,エージェントプログラムが導入されていて,業務 LAN 上のサーバ及び PC の構成情報の変化を検出した場合,エージェントプログラムは構成管理サーバに通知し,構成管理システムが構成情報を更新する。保守 LAN 上のサーバ及び PC の場合は,土曜日の日中に構成情報を更新する。
情報システム部のセキュリティ管理課は,情報セキュリティ管理を担当している。セキュリティ管理課は,情報セキュリティ運用支援サービスを提供している会社(以下,C 社という)と情報セキュリティサービスを契約している。C 社が B 社に提供しているサービスの内容は,次のとおりである。
マルウェア対策ソフトウェア(以下,対策ソフトという)を B 社に提供しており,B 社の全てのサーバ及び全ての PC には C 社の対策ソフトが導入されている。
OS ベンダと連携して,OS の脆弱性に関する情報を収集し,B 社に適切な助言を行う。
情報セキュリティインシデント対策の対応方針や手順の策定を支援する。
情報システム部の担当者は,平日 6:00 に,OS ベンダから最新の OS パッチが公開されているかどうかを確認する。サーバの OS パッチが公開されている場合は,図 2 に示す手順に従って,PC の OS パッチが公開されている場合は,図 3 に示す手順に従って,それぞれ OS パッチを適用する。
図 2 サーバの OS パッチの適用手順
(当日 6:00~7:00)九州工場の業務 LAN に接続されている PC を使って最新の OS パッチを入手し,外部記憶媒体に保存する。保守 LAN 上の副サーバ群に,外部記憶媒体に保存した最新の OS パッチをインストールし,再起動する。各サーバが正常に動作することを確認する。
(当日 7:30~10:00)副サーバ群を稼働環境として使用し,保守 LAN 上で生産システムのオンライン処理が正常に稼働することを確認する。
(当日 10:00~10:30)業務 LAN 上のバックアップサーバに,最新の OS パッチをインストールし,再起動する。バックアップサーバが正常に動作することを確認する。
(土曜日 9:00~10:00)確認が完了した最新の OS パッチを,業務 LAN 上の生産サーバ(正)及び DB サーバ(正)にインストールし,再起動する。業務 LAN 上で生産システムが正常に稼働することを確認する。
注記 図は,生産システムに関わるサーバについての手順の抜粋である。
図 3 PC の OS パッチの適用手順
(当日 7:00~7:30)九州工場の業務 LAN に接続されている PC を使って最新の OS パッチを入手し,外部記憶媒体に保存する。保守 LAN 上の PC に最新の OS パッチをインストールし,再起動する。PC が正常に動作することを確認する。
(当日 11:00~12:00)保守 LAN 上で,最新の OS パッチを適用した PC を使って生産システムのオンライン処理が正常に利用できることを確認する。
(当日 13:00~15:00)確認が完了した最新の OS パッチを,業務 LAN に接続された稼働中の PC にインストールイメージとして配付する。
注記 使用している PC への OS パッチの適用は,PC の再起動を契機として実施される。社員が PC を再起動する際に,自動でインストールが行われ,OS パッチが適用される。関東工場及び九州工場の生産部では,平日夜間も PC を利用しているので,PC のシャットダウンは,金曜日の 22:00 に実施され,その後 PC を再起動することで,OS パッチが適用される。
関東工場の PC の利用者(以下,通報者という)からセキュリティ管理課に"PC に保存したファイルが意図せず暗号化されておりファイルを開くことができない。"と,電話があった。セキュリティ管理課の IT サービスマネージャの D 氏は,通報者に対し PC を業務 LAN から切り離すように依頼した。
10:30
インシデント対応チームが発足され,D 氏が対応を指揮することになった。C 社の技術者から“今回インシデントは,9 月 7 日(月)に他社で発生したランサムウェアの感染例に似ている。B 社社内にマルウェアが拡散しているリスクがある。業務 LAN に接続されている全てのサーバ及び全ての PC を業務 LAN から切り離す必要がある。”と,D 氏に連絡が入った。D 氏は,経営幹部に状況を報告し対策実施の了解を得た。サーバ及び PC は,業務 LAN から切り離され,生産システムは停止した。
生産部から D 氏に,“今月の生産計画を達成するためには,遅くとも本日日の 18:00 までに生産システムを稼働する必要がある。”との要請が入った。
11:00
D 氏が調査したところ,通報者が 9 月 14 日(月)9:45 頃に不審な電子メール(以下,不審メールという)の添付ファイルを開封していたことが分かった。
D 氏は,通報者が開封した添付ファイルを C 社に送付し,支援を要請した。
13:00
C 社の技術者から,次の報告があった。 ① 当該の添付ファイルは,ランサムウェアである。他社で発生したランサムウェアに似ているが別のランサムウェアである。このランサムウェアは,感染から 24 時間以内に,感染した機器のストレージに保存されたファイルの暗号化を開始する。感染した機器から,LAN に接続している他の機器に OS の脆弱性を利用して攻撃を行い,短時間で急速に感染を広める。 ② 今回のランサムウェアの攻撃は,OS ベンダが 9 月 14 日 3:00 に公開した最新の OS パッチを適用することによって,回避できる。 ③ 今回のランサムウェアに対応できる最新のマルウェア定義の版を,本日の 16:00 に提供できる。
13:30
D 氏は,復旧計画の検討を行った。
まず,D 氏は生産サーバ(正)及び DB サーバ(正)を使用して,生産システムを再開する方法を検討した。16:00 以降,最新のマルウェア定義の版で対策ソフトの機能を使って,マルウェア感染の有無を確認する作業を行うことになるが,この作業には 2 時間 30 分必要となる。その後,最新の OS パッチを適用するが,完了予定時刻は 19:00 となるので,生産部から要請されている 18:00 までに生産システムを稼働できない。
生産システムの復旧(16:00 に作業を開始し,18:00 までに作業を完了する) ① 生産サーバ(正)及び DB サーバ(正)の代替機として,(ア)副サーバ群を起動する。 ② a ③ b ④ LAN 切替スイッチを使って保守 LAN を業務 LAN に接続する。 ⑤ バックアップサーバから生産 DB のフルバックアップを DB サーバ(副)にコピーする。 ⑥ バックアップサーバのデータ更新ログを使って,DB サーバ(副)を 8:00 の状態に復元する。 ⑦ 生産システムのオンライン処理を開始する。 ⑧ 8:00 から生産システムが停止した時点までのデータは,生産部員がデータを再投入する。
業務 LAN から切り離された PC の復旧(16:00 から 18:00 までの間に PC 利用者が対応する) ① PC には最新の OS パッチのインストールイメージが配付されているので,PC を再起動し,最新の OS パッチが適用されている状態とする。 ② PC のマルウェア定義を最新の版に更新し,マルウェア感染の有無を確認する。感染している場合は,マルウェアを駆除する。 ③ PC を業務 LAN に接続する(生産システムの利用は,18:00 からとする)。
業務 LAN に集計サーバを設置し,社員が不審メールと判断できずに添付ファイルを開封した場合は,開封した社員のメールアドレスが自動で集計サーバに送信されるシステムを構築する。
設問1
〔情報セキュリティインシデントの発生〕について,(1),(2)に答えよ。
(1)
表 2 中の下線(ア)について,今回インシデントの対応として,副サーバ群を使って生産システムを稼働できる理由を 40 字以内で答えよ。ただし,最新の OS パッチが副サーバ群に適用されていることは除く。
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(2)
表 2 の a 及び b には,通常の災害時立上げ計画の手順にはない作業で,今回インシデントの対応として,バックアップサーバに必要な作業が入る。
(a) a には,マルウェア対策の作業が入る。作業内容を 40 字以内で述べよ。
(b) b には,バックアップサーバを利用できるようにするための作業が入る。作業内容を 20 字以内で述べよ。
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設問2
〔問題点と対策〕について,(1)~(3)に答えよ。
(1)
表 3 中の下線(イ)について,現状を把握する方法を 30 字以内で述べよ。
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(2)
表 3 の c に入れる適切な字句を 15 字以内で答えよ。
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(3)
表 3 の d には,バックアップサーバのデータが利用できなくなる事態を想定した対策が入る。対策の内容を 50 字以内で述べよ。